アユタヤ王朝とバラモン教

2015/08/25

アジア アユタヤ タイ

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『古都アユタヤの遺跡観光・前編』で触れたように、アユタヤ王朝には「バラモン教」の文化が入り込み「政治制度」「思想」「宮内儀式」等が大きく変化した。

「バラモン教」とは何か

・古代インドの宗教
・ヴェーダと呼ばれる聖典
・自然崇拝
・四世紀以前のヒンドゥー教

「バラモン教」の特徴

・五趣(あるいは五道)という輪廻思想

古代から人間は肉体と魂でできているとされてきた。肉体は大地に還り、魂は天界へ昇る。そして生前の行いによって、魂の宿るべき新たな肉体が決まる。それが五趣で示されている以下の五つ。
「天界」「人間」「畜生」「餓鬼」「地獄」


・カースト制度

五趣で示されたものを、現世の社会制度にまであてはめてしまった。
「バラモン(司祭)」「クシャトリア(王族、武士)」「バイシャ(庶民)」「スードラ(奴隷)」「パンチャマ(不可触賤民)」

生まれた家によって決まっていて、職もカーストに結びついている。なおかつ結婚も同じカースト間のみでしか認められておらず、生涯変わることはないのできわめて過酷な制度と言える。

唯一の希望は輪廻転生。現世で信仰心をもち徳を積むことで、来世ではより上位のカーストへ生まれ変われるという希望。
しかし奴隷階級スードラにはそれさえなく、何度転生しようと奴隷階級スードラのまま。(不可触賤民パンチャマは人ではないとされているので、人が持つ身分制度等の外に置かれている為、輪廻転生もない)

そんな奴隷スードラ、賤民パンチャマを救済する宗教が仏教。
バラモンは輪廻の中でしか転生できなかったのを、仏教では解脱さえすれば輪廻の外側へ行けると説いている為。

・なぜ上座仏教を持つアユタヤにバラモン教は受け入れられたか

ここからは資料がないため想像も混じる。

まず二つの宗教の類似性。
どちらにも「輪廻」という概念はあり、バラモン教の神ヴィシュヌの生まれ変わりの一つが「仏陀」という事から親和性の高さが伺える。

そして注目したいのは、バラモン教がアユタヤに入ってきた原因。
誰かが布教しに来たでも、それを素敵と思った誰かが広めたわけでもない。
アンコール・トムを攻略した後捕虜となったクメール官吏によって入ってきた。

捕虜という事は、ただの一般人は接点を持てない。
軍人あるいは国の中枢にいる人物=身分の高い人物のみ。

仏教国では最も尊敬されるべきは、国王ではなく仏陀。
国王がなんと言おうと、仏陀の教えの下では無力。
なので、知恵や力を持った下の人間を恐れた上層階級の人間が、クメール官吏から聞いたバラモン教に飛びついた。

王様を神の生まれ変わりとし、仏陀と等しい存在だと知らしめる。
前世の行いで現世のカーストが決まる。
不平を持つひとのはけ口の為、人ではない階級を用意する。

それによって絶対的な尊敬を集め、統治もしやすくなるので内乱も回避でき上層部は安泰。
上の人間にとっては利しかない、夢のような宗教だ。

しかし反発する人は絶対にいたはず。特に低階級に指定された人たちはおそらく猛反発したであろう。
しかし見せしめを込め、人ではない事を理由に虐殺されたりすれば、周りの人間はわが身可愛さから従うようになる。

不可触賤民でなくてよかった、
奴隷階級ではなくよかった。
たくさん良い行いをして、来世では上の階級に生まれ変われたらいいな。

次第にそんな考えが王朝全体を包んだのではないかと考える。


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